旅【2009-08-18更新】 | 京都市の不動産のことならセンチュリー21京都ハウス

2009-08-18
田岡 拓

何もかも省略して結果から言うと、軍艦島には行けませんでした。

倉敷と、山口と、秋吉台と、出雲大社と、石見銀山と、鳥取砂丘などを適当にチラ見しながら、

長崎まで行って、帰ってきました。

帰ってきてから、もう二度とこんなことはしないだろう、と思いました。


去年の夏、僕は友達と旅をしました。

名古屋から北海道までの長い旅です。

レンタカーを借りて、頑なに下道を走り、道の駅に車を停めて眠り、

コインランドリーで洗濯をして、道すがら見つけた銭湯で汗を洗い流す。

九日間かけて3500kmを走りぬきましたが、その長い道の果てには何もありませんでした。

北海道はただの大地でした。

そこはシャングリラでも天竺でもラピュタでもない。

だから、「何のためにそんなことをしたのか?」と聞かれると、

答えに窮してしまいます。何のためでもなかった。

しかしだからこそそれは旅だったのです。旅とは過程なのです。

とは言え、僕たちがそんな無茶をできたのは、皆こう考えていたからでした。

「こんなことができるのは、もうこれが最後だろう」

「というかもう二度とやりたくない」

「普通に北海道旅行したほうがよかったかも」


そして一年が経ちました。僕たちは就職したり、医学部に入りなおしたり、

引き篭もったりで、それぞれの苦難の道を進んでいました。

僕の盆休みの日程が決まった頃、友達とひさしぶりに電話をしました。

友達「ふーん。じゃあ今年は西日本走るやろ。九州目指して」

僕「え?うん」

え!? うん!?


人の記憶というのはすごいもので、一年ぐらいブランクがあると悪いイメージはほとんど取り払われ、

むしろ、素晴らしい思い出として昇華してしまいます。

子供の頃は無茶苦茶楽しかったという記憶がありますが、実際にはそんなことはない。

あの頃はあの頃で、比重的には今と変わらない重さの悩みと苦しみがあったはずなのです。

それをすっかり無視して、僕たちは適当に「あの頃はよかった」などとほざいている。

でもまあ別にそれでいいのです。


そういうわけでまた僕たちは旅立ちました。

ろ過されてどっかにいった苦しみは無視しました。

盆休み8日のうち5日間を使うという破滅的な計画を立て、レンタカーを予約して、

鞄にタオルとかを詰め込みました。

目的地は軍艦島。

何も無い廃墟の島であり、そこに上陸する船は、3日に1日は欠航するといいます。

でもなんとなく、大丈夫な気がしていました。

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